ペーパーレス化を導入したのに「かえって手間が増えた」「結局、紙に戻った」
そんな声を耳にしたことはありませんか?
中小企業でペーパーレス化が失敗する理由の多くは、紙と電子の二重運用と、例外ケースの設計ミスと考えています。
そこで本記事では、中小企業の経営者・管理職の方に向けて、ペーパーレス化でメリットを出すための条件と、デメリットを避ける進め方を整理して解説します。
▼ この記事を読むと、以下の内容を理解できます。
ペーパーレスの定義と3つのレベル
そもそもペーパーレスって何ですか?
ペーパーレスの定義
ペーパーレス化(電子化)とは、紙で扱っていた文書・資料を電子データに移行し、紙を使わず業務を行うことです。紙の書類をPDF等で保存・共有し、業務プロセス自体もデジタル化する取り組みを指します。
政府のテレワーク推進に関するガイドライン等でも紙の廃止が促されており、企業全体で向き合うテーマになっています。とはいえ「ペーパーレス」と一口に言っても、対象書類や業務範囲によって難易度は大きく変わります。
ペーパーレスの三段階
ペーパーレス化には段階があり、無理なく進めるには簡単な業務から段階的に広げるのがお勧めです。
一般的に次の3レベルに分けられます。
レベル① 社内完結
稟議書、社内回覧、経費精算など、社内だけで完結する書類のペーパーレス化です。社外との調整がほぼ不要なため、電子化のハードルが低く、最初の対象として選びやすい領域です。
ワークフローや経費精算ツールを導入すると、申請から承認までをオンラインで完結でき、承認スピードの向上など効果も実感しやすいでしょう。社内だけで回る分、比較的短期間で移行しやすい点も魅力です。
レベル② 一部社外連携
請求書、納品書、見積書など、一部で社外とのやり取りが発生する書類のペーパーレス化です。取引先によってフォーマットや紙対応の考え方が異なるため、レベル①より難易度は上がります。
自社だけで進め切ろうとせず、取引先の準備状況を確認しながら段階的に移行するのがポイントです。
レベル③ 高度な社外連携
契約書のように、法律要件や相手方の合意が不可欠な書類のペーパーレス化です。電子契約サービスを使えば締結スピードの向上や印紙税削減など、大きなメリットが得られます。
レベル③は新規契約から少しずつ電子化し、徐々に範囲を広げるほうが現実的です。相手方の理解も必要になるため、一定の調整期間は見込んでおきましょう。
結論|ペーパーレスが意味ないと感じる原因は二重運用と設計ミス
ペーパーレス化が「意味がない」「非効率だ」と感じる原因の多くは、紙と電子の二重運用、運用設計ミスと考えられます。
二重運用が起きる原因
ペーパーレス化したつもりでも、移行期間中などに紙とデータが混在すると、「どちらが正か」「どこにデータがあるか」が曖昧になります。その結果、検索や管理に余計な手間が増え、非効率に感じられます。
この過渡期を短くできないと「結局紙に戻った」という状態になりがちです。
紙対応が残るケース
ペーパーレス化したいと思っても、取引先が紙を求めれば紙対応が残ります。さらに社内でも、電子システムに不慣れな人が「結局印刷して処理する」運用に流れると、紙と電子が並走したまま固定化しやすくなります。
こうなると紙のコストも手間も減らず、メリットが消えてしまいます。
移行期間の設計ミス
移行期間を明確に定めず、併用をズルズル続けてしまうケースは少なくありません。「いつまでに完全移行するか」という期限と、「例外は何か/誰が判断するか」というルールがないと、現場の判断で紙が残り続けます。
設計ミスによる使い勝手の悪さ
せっかく電子化しても「探しにくい」「結局使われない」となれば意味がありません。
使われない原因は「検索性の設計が弱い」か「教育・定着の設計が弱い」場合が多いです。
検索性の問題
フォルダ分類、ファイル名ルール、タグ付けなどが統一されていないと、必要書類の検索に時間がかかります。その結果、「電子化したのに、むしろ探せない」という状態に陥ります。
各自がバラバラに保存していると、紙のキャビネット以上に混乱します。ここは運用ルールで解決する領域です。
ITリテラシーの問題
ITリテラシーが低い社員が多い職場では、ペーパーレス化しても使いこなせず「紙より不便」と感じられがちです。このような場合、操作に慣れるまで教育期間を設け、定着させる必要があります。
確かに使いこなせない問題はありがちですね
現場がつまずく前提で、研修とサポート体制を用意しておくのがお勧めです
ペーパーレスのメリット・デメリット
ペーパーレス化には確かなメリットがありますが、デメリットやリスクもゼロではありません。両面を理解したうえで導入計画を立てることが重要です。
ペーパーレスのメリット
経費の削減
紙運用には、以下のような様々なコストが伴います。
- 紙代
- 印刷代
- 郵送費
- キャビネットや保管倉庫費用
- 期限切れ書類の廃棄コスト
ペーパーレス化によって、これらのコストを削減できます。
また、電子契約を使えば印紙税が不要になるため、契約書まわりのコストも下げられます。
業務効率・生産性の向上
代表例は検索・閲覧の効率化です。紙書類は探すのに時間がかかり、紛失のリスクもあります。電子化すればPCで検索可能になり、文書量が増えるほど差は大きくなります。
加えて、紙は同時閲覧が難しいですが、電子化すれば複数人が同時に閲覧・編集でき、情報共有が早まります。結果として、属人化の解消にもつながります。テレワークや外出先からの作業にも対応しやすくなり、場所の制約も減ります。
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セキュリティ・紛失リスクの低減
紙は紛失・劣化のリスクがあり、水害や火災にも弱いです。電子データはバックアップや耐災害対策を取りやすく、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)強化に有効です。
さらにアクセスログや閲覧制限を設定できるため、機密文書の権限管理もしやすくなります。紙は誰でも閲覧・コピーできてしまう弱点がありましたが、電子は運用次第で改善できます。
スペースの有効活用と企業イメージ
紙保管のためのキャビネットや倉庫を削減でき、オフィスの有効スペースが増えます。また、紙削減は環境配慮(SDGsなど)という面でもアピールしやすく、企業イメージ向上効果も期待できます。
メリットを最大化する条件
ペーパーレス化のメリットを最大化するには、条件があります。言い換えると、この条件を外すと効果が薄くなる可能性があります。
紙運用との併用をやめる
対象業務について紙の併用を極力なくすことが大前提です。移行期間は避けられないにせよ、期間を短くし、完全に電子運用へ移行できればコスト・効率の両面で成果が出ます。
逆に、二重管理が続く限りメリットは相殺されます。たとえば「電子請求書にしたが、一部取引先は受け取れず印刷して郵送している」という状態では、本来の効果は出にくいでしょう。
ルールとシステムを整備する
ペーパーレスによる検索性能や共有効率化メリットは、適切なルールとシステムがあってこそ実現します。命名規則や保存場所が曖昧なままでは、探せなくなり、情報漏洩リスクも高まります。
そのため事前に管理ルールを作成し、必要に応じて文書管理システムや共有クラウドで統制を効かせることが重要です。
目的を共有してサポートする
現場がメリットを実感し、協力してくれる状態を作ることが重要です。「なぜペーパーレス化するのか」を共有しないと、変化への抵抗感から形骸化しやすくなります。
特に社歴が長い従業員ほど現状維持を望む傾向があるため、「残業削減につながる」「確認作業が減って楽になる」など、現場側の利点も伝える必要があります。加えて、研修やサポート体制を用意して定着を支えましょう。
ペーパーレスのデメリット
一方で、ペーパーレス化には注意点もあります。ただし事前設計で軽減可能な部分も多いです。
初期コストと効果実感の遅れ
システム導入費用、機器整備、研修コストなど初期投資が発生します。その割に短期では効果が見えにくく、「費用対効果が分かりづらい」と言われることがあります。
短期の印象ではなく、長期で回収できる計画かを見極める必要があります。
視認性・操作性の問題
ディスプレイで大判図面や長文を閲覧する場合、紙より見づらいと感じることがあります。複数資料を並べる、付箋や手書きメモを使う、といった紙特有の操作感に慣れた人には心理的ハードルにもなります。
ただし、モニターの大型化・高精細化、タブレット+ペンの活用などで改善できる余地は大きいです。
システム障害・データ消失リスク
電子化するとネットワークやシステムへの依存が増えます。障害や停電時に業務が止まるリスク、データ破損・消失のリスクを前提に、バックアップや冗長化など対策が必要です。
しかし紙は一点ものになりやすく、災害で一括喪失するリスクもあります。電子化で遠隔バックアップを取るほうが安全な場合もあります。
法規制への対応
帳簿書類などは、電子化にあたり遵守すべき要件があります。理解不足のまま保存すると、後でやり直しになる可能性もあります。ここは後述の法務・税務パートで整理します。
メリットが大きいけれど、ちゃんと導入しないとデメリットもあるんですね
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ペーパーレス適性が高い業務、低い業務
ペーパーレス化は万能ではありません。業務ごとに適性を見極めることが、ペーパーレス成功の秘訣です。
ペーパーレス適性が高い業務
以下の特徴を持つ業務は、ペーパーレス化の効果が出やすいです。
社内完結型の業務
稟議書・経費精算・勤怠管理など社内だけで完結する業務です。取引先との調整が不要で、社内ルールだけで完結するため電子化のハードルが低く、短期間で移行できます。
定型的・繰り返しの業務
月次報告、定例会議の議事録、日報など定型フォーマットがある業務は、テンプレート化しやすく電子化の恩恵が大きいです。検索性も向上し、過去データの参照が容易になります。
複数人での共有・同時閲覧が必要な業務
プロジェクト資料、顧客情報、在庫データなど複数部署で共有する情報は、電子化すれば同時アクセスが可能になり業務効率が向上します。紙では一人しか見られず回覧に時間がかかる問題が解消されます。
検索頻度が高い業務
契約書、取引履歴、過去の見積書など頻繁に検索・参照する書類は、全文検索機能により数秒で目的の情報に辿り着けます。紙のファイルから探す手間が大幅に削減できます。
テレワーク対応を進めたい業務
テレワークやオンライン業務が浸透している企業では「紙がボトルネック」になりがちです。出社しないと見られない書類を電子化すれば、場所を選ばず業務ができ生産性が向上します。
ペーパーレス適性が低い業務
以下の特徴がある業務は無理に電子化せず、別の効率化策を検討すべきです。
手書きが必須の業務
現場作業での手書き記入、顧客との対面で手書き署名が必要な契約など、手書きが不可欠な場合です。タブレット+ペン入力で代替できるケースもありますが、コストと運用を慎重に検討すべきでしょう。
現場で即座の記入・確認が必要な業務
建設現場での図面確認、製造ラインでのチェックシートなど、デジタル機器の持ち込みが困難または非効率な環境では紙の方が実用的な場合があります。
法律上紙の原本が必要な書類
一部の契約書や許認可書類など、法律や業界規制で紙の原本保管が義務付けられているものがあります。電子化の可否を事前に法務・税務専門家に確認しましょう。
取引先が紙を要求する業務
発注書・納品書など取引先とのやり取りで、相手が紙を希望する場合です。電子化しても印刷が必要になり二重運用になります。取引先と調整できるかが重要です。
大判図面など視認性が重要な業務
建築図面、設計図など大判の書類は、ディスプレイでの閲覧では全体像が把握しづらく作業効率が落ちる場合があります。大型モニターや専用ソフト導入で解決できるか、見極めが必要です。
ペーパーレス導入成功までの6ステップ
中小企業がペーパーレス化を成功させるには、計画~定着まで順番に進めるのが大切です。
ステップ1:目的とKPIを決める
闇雲に「紙を減らそう」と始めるのではなく、何のためにペーパーレス化するのかを明確化します。
目的の設定
「年間○万円のコスト削減」「処理時間を半減して残業削減」「テレワーク環境の整備」など、会社としての目的を定めます。プロジェクトを形骸化させないために、経営層・現場が納得できる目的が必要です。
KPIの設定
達成度を測るKPI(重要業績指標)を設定しましょう。「○○費を〇%削減」「○○の処理日数を〇日短縮」など具体的な数値目標にします。これがないと、後で評価できないからです。
ステップ2:対象業務を確定する
最初に電子化する業務を選定します。ペーパーレス適性を参考に、社内完結で紙が多い業務や、効果の大きそうな業務から選びます。
業務のリストアップ
候補となる書類をリストアップし、「電子化可能か」「法律上問題ないか」「現場の協力が得られそうか」など観点で絞り込みます。
対象範囲の明確化
そして「稟議書と経費精算をまず電子化する」「取引先と相談の上、請求書発行を電子化する」等、具体的な対象業務と範囲を決めましょう。
ここでは、例外的に紙のままにする書類(社外から受領する伝票類など)も洗い出しておきます。
ステップ3:例外ルートを設計する
完全電子化が難しい例外ケースへの対応策をあらかじめ設計します。例外対応を事前に設計しておけば、移行期の混乱や二重運用期間を短くできます。
法律上の例外
法律上電子化できない書類については紙での保存方法を明確に決め、電子データとの区別管理方法を定めます。「この書類は紙原本を○年間保存」といった社内規程に落とし込みましょう。
取引先との調整
取引先が紙を希望する場合のフローも決めます。「取引先A社分は紙発行しコピーをスキャン保存、それ以外は原則電子」など、現実的な例外ルールです。
システム障害時の対応
システム障害などで電子承認できない場合のバックアップ手段(一時的に紙で決裁し後日登録する、など)も用意します。
ステップ4:管理ルールを統一する
運用開始前に、文書管理のルールを揃えます。
保存・命名ルール
電子化する書類ごとに保存場所やファイル命名規則を定めます。「見積書は共有フォルダXに『見積_社名_日付.pdf』形式で保存」など、誰でも迷わず保存・検索できるルールが必要です。
承認フロー・廃棄ルール
承認フロー上のルール(最終承認者や、代理承認のルール)や紙原本の廃棄ルール(スキャン後○日保管し裁断廃棄 等)も決めます。
ルール作成時には現場の意見も取り入れ、実情に合ったものにしましょう。ルールは文書化し、運用マニュアルとして周知します。
ステップ5:教育と合意形成を設計する
ペーパーレス化は、社員の協力がないと失敗します。
説明会の実施
まず目的と新しい業務フローを説明する場を設け、全員に方針と自分たちのメリットを理解してもらうのが重要です。「なぜやるのか」「どう変わるのか」を丁寧に伝えます。
研修・サポート体制
ツールの使い方研修やマニュアル配布を行います。特にITが苦手な層には個別フォローを準備しましょう。
さらに現場からの不安や疑問を吸い上げる窓口を用意します。(問合せ担当者の設定、試行期間中の定期ヒアリングなど)
ステップ6:運用KPIで改善する
導入後は設定したKPIをモニタリングし、PDCAを回して運用を改善します。
KPIの定期測定
例えば月ごとの紙使用量・印刷枚数や、電子承認の処理件数などを計測します。
計測結果に応じて「特定部署だけ紙が減っていないなら追加教育する」「書類検索に時間がかかるならフォルダ構成を見直す」などの対策を行います。
効果が確認できたら、次の業務のペーパーレス化に着手します。
ルールの改善
運用ルールも状況に応じて改善します。マニュアルは随時更新し、社員に変更を周知しましょう。
このように継続的に改善と展開を行えば、ペーパーレス化を全社的な成功につなげられます。
ペーパーレスを成果に変えるDX・AI・RPA
ペーパーレス化はゴールではなくDX(デジタル・トランスフォーメーション)の入口です。
紙を電子に置き換えた後、業務をさらに効率化できます。
紙なので諦めていた業務効率化がペーパーレスで叶うんですね
ペーパーレスは業務効率化に繋がる大きな1歩です!
ペーパーレス化からどのような自動化が可能なのか、見ていきましょう。
承認システムと電子署名で紙とハンコから解放
「紙の方が安心」と思われがちな稟議・契約の承認業務ですが、これもシステムと電子署名によって効率化できます。
申請・承認システムの導入効果
従来ハンコをもらうためだけに出社・回覧していた稟議書も、オンライン申請・承認システムの導入でPCやスマホから申請・承認が可能となり、決裁スピードが向上します。
具体的には、稟議書をシステムに入力すると承認者に通知が届き、承認者は自分のPCからワンクリック承認できます。承認待ちで書類が止まるケースが減少し、意思決定のスピードが速まります。
申請・承認システムと聞くと、多額の開発費用が必要なイメージがあるかもしれません。しかしKintoneなどの業務アプリ作成ツールを使用すれば、非常に安価に導入することができます。(Kintoneは月額1万円~)
電子署名の効果
電子署名サービスを使えば契約書もクラウド上で締結できます。電子契約は、紙の契約書を作成・交付しない運用であれば、印紙税の負担を避けられるケースがあります。
取引先にメールでURLを送り、先方がクリックして署名するだけで契約完了。郵送や対面での押印が不要になり、契約締結までの時間が短縮される効果もあります。
AI・OCRで入力負担を減らす
紙帳票を電子化した後、ネックになるのはデータ入力の手間です。ここでAI-OCR(AI搭載の光学文字認識)が力を発揮します。
AI-OCRの導入効果
AI-OCRを導入すると、請求書や申込書など紙書類をスキャンするだけで、データ化できます。手入力の手間を大幅に削減でき、入力ミスも防止できます。
岩手県久慈市では、AI-OCRとRPAを組み合わせ、ふるさと納税処理の入力時間を約78%(19.8時間→4.2時間)削減し、アンケート集計も約83%削減する成果が出ています。
これにより、人員減の中でも住民サービス向上に繋がったと報告されています。
紙を電子化するだけでなく、その後工程を自動化すれば、ペーパーレス化のメリットを最大化できます。
RPAで転記を減らし、照合まで自動化する
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)はパソコン作業を自動化する技術です。
RPA適用の例
例えば請求書を電子受領した後、会計ソフトに支払情報を転記入力する作業や、入金消込のために銀行明細と請求一覧を突き合わせる作業はRPAの得意分野です。RPA導入により、こうした繰り返し作業は数分で正確に完了し、人は例外処理だけに対応すればよくなります。
導入効果の実例
実際、経理業務でRPAを導入した例では月数十時間の手作業を削減し、ミスも激減しています。ペーパーレス化でデータが電子になっているからこそRPAが適用できるわけで、紙中心では実現できなかった自動化による生産性向上が可能になります。
「紙をなくす」から一歩進み「入力や照合の手間もなくす」段階までDXを進めれば、大きな成果(残業削減や業務スピード向上)が得られるでしょう。
ペーパーレス定着チェックリスト
ペーパーレス化を実施する際には、導入前後でチェックすべき項目があります。導入前後にこのリストを確認し、抜け漏れがないようにしましょう。
導入前チェック
導入前に押さえておくべきポイントをおさらいしましょう
- 経営トップのコミットメント
経営者からペーパーレス推進の明確なメッセージが出ているか。全社方針として周知されているか。 - 目的・目標の明確化
ペーパーレス化の目的(例として、コスト削減○円、時間削減○時間)が設定され、KPIとして数値目標に落とし込まれているか。 - 対象業務と範囲の特定
どの部署・どの書類から電子化するか決まっているか。業務フロー全体を見渡し、段階的導入計画ができているか。 - 例外対応の策定
電子化できない書類(法律要件など)の扱い方、取引先が紙希望時の対応、システム障害時のフローなど例外シナリオが設計されているか。 - 文書管理ルール整備
フォルダ構成、ファイル命名規則、権限設定、紙の原本保管廃棄ルールなどが定まり、文書化されているか。 - 教育・周知計画
従業員への説明会、研修、マニュアル配布等の計画があるか。ITリテラシーに差がある場合のフォロー策も含め準備しているか。 - 現状の数値把握
現在の紙利用量や関連コスト、処理時間などベースラインとなる数値を計測済みか(効果測定のため)
導入後チェック
- KPIモニタリング
設定したKPIを定期測定し、数値目標に対する進捗を確認しているか。進捗が悪い場合の原因分析プロセスがあるか。 - 定着度
現場で電子化されたプロセスが遵守されているか。旧来の紙運用に逆戻りしている箇所はないか。もしあれば理由を調査し対策したか。 - ルール遵守状況
ファイル命名や保存場所ルールが守られているか。違反や無秩序な保存があれば是正指導を行ったか。 - システム利用状況
ワークフローの申請・承認が適切に行われているかログを確認したか。利用率が低い場合、追加トレーニング等を実施したか。 - 例外発生状況
紙で処理した例外案件の件数を把握しているか。想定外の例外が頻発していればルール変更やシステム連携検討をしたか。 - 効果の社内共有
ペーパーレス化による成功事例や数値効果を社内報告したか。具体的な成果を共有し、他部署にも展開しているか。 - 継続的改善
定期ミーティングを設け、上記チェック項目をレビューし、必要なアクションを起こしているか。
このようなチェックリストを用いて、導入前の準備抜け漏れ防止と、導入後の定着度評価を行いましょう。
ペーパーレスの法務・税務の注意点
ペーパーレス化に際しては、関連する法律・規制の要件を正しく理解し遵守する必要があります。法制度上の保存義務や証拠能力にも関わるため、以下の観点で注意してください。
電子帳簿保存法で確認すべき観点
近年のペーパーレス化推進で鍵となる法令が電子帳簿保存法です。
電子データの保存ルール
電子で受け取った請求書等は、紙に印刷して保管するだけでは、電子帳簿保存法の要件を満たせません。電子で受け取ったものは電子のまま保存する必要があります。(もちろん印刷しても問題はありませんが、電子データも合わせて保管する必要があります)
改ざん防止措置
電子データが改ざんされていないのを証明するため、タイムスタンプの付与やシステムの訂正・削除・追加履歴の確保、または改ざんできない仕組みで保存する必要があります。
検索性の確保
税務調査時にすみやかにデータを提出できるよう「取引年月日・金額・取引先」の3項目で検索できる機能が求められます。
個人情報・機密で確認すべき観点
ペーパーレス化前後で、個人情報保護や機密情報管理のアプローチも変わります。以下の点を確認しましょう。
個人情報保護法との整合
顧客名簿や人事記録など「個人情報を含む書類」を電子化する場合、安全管理措置を講じる必要があります。アクセス権限を業務上必要な者に限定する、通信経路を暗号化する、外部クラウドの信頼性を確認する等です。
機密情報の取り扱い
営業秘密や社外秘文書については、電子化によって社員個人PCに保存されてしまうとリスクがあります。集中管理型の文書管理システムを利用し、機密レベルに応じて閲覧権限や編集権限を設定しましょう。
クラウド利用ポリシー
多くのペーパーレス関連サービスはクラウド提供のため、自社の情報をクラウドに預けることになります。データセンターの所在地(国内か海外か)、サービス提供企業による十分なセキュリティ対策が取られているか、確認しましょう。
専門家に確認が必要
税務(税理士・公認会計士)、法務(弁護士)、情報セキュリティの観点は専門性が高い領域です。
不安がある場合は、経産省や国税庁のQ&Aを参照しつつ、自社の運用が要件を満たすかを専門家に確認してください。中小企業向けの無料相談会などを活用する方法もあります。
まとめ|ペーパーレス化はスタートでありゴールではない
ペーパーレス化はDX・働き方改革の第一歩です。その先でAI-OCRやRPAを組み合わせると、「入力をなくす」「照合を自動化する」段階に進めます。
中小企業でも、社内完結の業務から段階的に始め、ルールと教育を徹底すれば、コスト削減・効率化のメリットを享受できます。
そしてペーパーレス化が「意味なかった」と言われる典型的な理由は、二重運用の放置と例外設計の甘さです。
裏を返せば、移行期限を切り、例外を先に潰すだけで、成功確率は大きく上がります。
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現状分析→設計→定着→自動化まで、一気通貫して進めたい方は、私たちにお任せください。
- ペーパーレス化を進めたいが、何から始めれば良いか分からない
- 紙の必要書類を探すのに時間がかかる
- 申請・稟議がハンコ待ち・回覧待ちで止まり、締切に間に合わない
- 監査・税務調査のたびに、紙の山から証憑を掘り起こしている
このような課題や不安がある場合は、無料相談でお知らせください。
