- 残業削減の指示だけ出ても、現場の業務量は何も変わらない
- 経営者として人件費削減を迫られているが、どこから手をつければいいか分からない
- 管理職として、経営層の要求と現場の実態の板挾みに悩んでいる
- 現場リーダーとして、短時間で成果を出すプレッシャーに苦しんでいる
このような課題を抱えていませんか?
人件費削減だけを目的にした残業削減は、優秀な人材の離職を招き、生産性を下げるリスクがあります。残業削減とは業務の見直しとデジタル化を伴う業務改革の結果として達成されるべきです。
▼ この記事で分かること
結論|残業削減は業務効率化とDXの結果
残業を減らせって言われても、仕事量が多すぎてどうすれば良いか分かりません
残業削減は業務の見直しとデジタル化を進めれば、自然に達成されるものです
「業務の見える化」「標準化」「自動化」という3本柱で、残業削減と生産性向上を同時に達成する方法をご紹介します。3本柱について説明する前に、なぜ残業を減らすべきなのか、生産性向上が必要な理由について押さえておきましょう。
健康リスクと生産性データで見る現状
残業削減だけを最優先目標にしてしまうと、本来必要な業務設計の見直しが後回しになり、現場に無理を強いることになりがちです。
残業の健康リスク
厚生労働省が定める脳・心臓疾患の労災認定基準では、1か月に約100時間、または発症前2〜6か月平均で月80時間を超える時間外労働がある場合、業務と発症との関連性が強いと評価されます。
これは「ここまでは安全」という意味ではなく、この水準を超えるとリスクが急増するラインです。つまり、法的な上限ギリギリまで残業させるという発想そのものが危険だと認識する必要があります。
日本の生産性は低い
日本の労働生産性は国際的に見ても低水準です。日本生産性本部の調査によると、2022年の日本の時間当たり労働生産性は52.3ドルでOECD38か国中30位、一人当たり労働生産性も85,329ドルで31位と、いずれも1970年以降で最も低い順位でした。
日本企業(特に中小企業)では、生産性の低さが大きな課題となっています
残業削減×生産性向上×業務効率化の3本柱
残業削減と生産性向上を両立させるには、業務・DX・人の3本柱をセットで動かす必要があります。
業務の見える化とムダな業務の削減
まず、残業実態を数字とカテゴリ(部署別・曜日別・業務別)で把握し、「どの業務にどれだけ時間がかかっているか」を可視化します。
そのうえで、目的に紐づかない作業や二重チェック、承認だけ何度も回っている業務などを洗い出し、削減候補を明確にします。
標準化と人の配置見直し
属人的な業務を標準化し、誰でも対応できるようにすることで、特定の担当者への業務集中を解消します。また業務の平準化により繁閑差をならし、チーム全体で負荷を分散しやすくなります。
DX・RPA・AIによる自動化とデジタル化
ペーパーレス化や業務アプリの導入で、紙・Excel前提の業務を効率化し、RPAで定型業務を自動化します。生成AIを活用すれば、文書作成や議事録要約など、「頭は使うが型が決まっている仕事」の工数を大きく削減できます。
すぐに3本柱の詳細を見たい方はこちら
この記事では、上記の3本柱を詳しく解説します。
▶ 残業削減の全体像は「残業削減完全ガイド」で解説しています
残業削減と生産性向上が両立しない理由
残業削減と生産性向上が両立しない背景には、組織構造と業務設計の問題があります。ここでは、残業が常態化する典型パターンと、長時間労働が生産性を下げるメカニズムを解説します。
残業が常態化する組織の典型パターン
残業が常態化する組織では、特に以下のような声をよく聞きます。
- 残業前提で給与を考えていた
- 長時間労働が当たり前で、管理職も悩んでいた
こうした組織に共通する3つの要素をご紹介します。
① 業務量・体制はそのままで指示だけ出す
経営層が残業削減を打ち出しても、業務量や人員体制は変えないケースです。
現場は短時間で同じ成果を求められ、結果としてサービス残業や持ち帰り仕事が増えます。
② 勤怠・工数の管理がアナログで実態が見えない
「どこに時間がかかっているか」が見えない状態では、改善の打ち手を考えようがありません。紙のタイムカードやExcel管理では、部署別・業務別の残業実態が把握しづらく、対策が後手に回ります。
③ 長時間労働が評価される文化
遅くまで残っている社員が「頑張っている」と評価され、定時で帰る社員が評価されない文化では、残業削減は掛け声だけで終わります。評価制度と連動させない限り、現場の行動は変わりません。
▶ 残業を評価しない「成果重視」の評価制度の作り方はこちらで解説しています。
生産性向上につながらない残業削減施策
残業削減施策として、ノー残業デーや残業禁止令だけを導入するケースがあります。
しかし、業務設計を変えないまま制度だけ入れると、以下のような副作用も生まれます。
- サービス残業
- 持ち帰り仕事
- 他の曜日の残業増
単に残業を抑えるだけでなく、テレワーク・ITツール導入・業務フローの改善など、業務そのものの見直しとセットで進める必要があります。
制度と業務設計の両輪で進めなければ、残業削減は形骸化してしまいますよ
長時間労働が生産性を下げるメカニズム
長時間労働は短期的にはアウトプットを増やしたように見えても、中長期では生産性を下げます。ここは誤解されがちなポイントです。
健康リスクと集中力の低下
長時間労働は、健康リスクを高めるだけでなく、生産性そのものを低下させます。
長時間労働により睡眠時間が確保できないことは、メンタル不調の大きな要因になると、厚労省関連の研究報告が指摘しています。
モチベーション低下と離職リスク
長時間労働が続くと、社員のモチベーションが低下し、優秀な人材ほど他社へ転職していきます。
内閣府の分析では、働き方改革(長時間労働是正・柔軟な働き方)が、人的資本の強化や業務効率化を通じて生産性向上に繋がりうると示されています。
パーキンソンの法則|時間があるほど仕事が膨らむ
パーキンソンの法則とは「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」という経験則です。例えば、こんな経験はありませんか?
- 会議時間を長く取ると議論がダラダラ続く
- 締切がない資料作成では細部の修正に延々と時間をかけてしまう
残業が常態化している組織では、この法則が働いていることが多いです。時間制限がなければ、本来1時間で終わる仕事に2時間かけてしまうのです。
締切を明確化し、業務の優先順位を整理して、この罠から抜け出しましょう
残業削減と生産性向上をかなえる業務効率化の3本柱
残業削減と生産性向上を両立させるには、業務の見える化 → 標準化 → 自動化という3本柱を実行します。ここでは、それぞれのステップを具体的に解説します。
ステップ1 業務の見える化
残業実態を数字とカテゴリ(部署別・曜日別・業務別)で見える化すると、効率化すべき業務を判断できます。
勤怠データを集計する
勤怠管理システムを導入している企業であれば、部署別・曜日別の残業時間を集計し、「どの部署の、どの曜日に残業が集中しているか」を把握します。
手作業での集計が難しい場合は、クラウド勤怠管理システムの導入も検討するとよいでしょう。
IT導入補助金の事例では、勤怠管理に時間がかかり残業把握も手作業だった企業が、現場打刻システムと就業規則の見直しにより、残業時間を3分の1に、勤怠事務時間を2日→1日に削減したと報告されています。
業務を棚卸しする
次に業務の棚卸しを行い、それぞれの業務の目的とプロセスを整理します。
棚卸では業務を一覧化し、それぞれの業務にかかる時間、頻度、目的、課題を記入しましょう。
例えば以下のような一覧表を作成します(簡略化していますが、実際の支援ではより詳細な棚卸表を使います)
| 業務名 | 目的 | 年間作業時間 | 課題 |
|---|---|---|---|
| 請求書の受領・支払処理 | 請求書を正しく承認し、期限までに支払うこと | 約240時間(20h/月) | 紙/PDF混在で転記が多い。承認待ちで滞留しやすく、締め前に残業が集中 |
| 見積依頼メールの仕分け・台帳登録 | 見積依頼を漏れなく担当へ回し、対応状況を可視化する | 約180時間(0.7h/日×260日) | 件名・添付形式がバラバラで分類が手間。転記ミスによる重複/抜け漏れが発生 |
特に業務の目的を明確化することで、不要な作業も洗い出すことができます。不要な作業は思い切ってやめることで、大幅に業務効率を改善できる場合があります。
業務を一覧化するのは大変だけど重要なんですね
DXの成功企業は、導入前に自社の業務プロセスを見直していることが多いです
無料診断にて業務棚卸のサポートを実施中です。ご興味があればぜひお問い合わせください。
ステップ2 標準化で属人化を解消
属人的な業務を標準化し、誰でも対応できるようにすることで、特定の担当者への業務集中を解消します。
業務マニュアルを整備する
業務マニュアルを整備し、手順を標準化します。
標準化により、休暇取得のしやすさが向上し、属人化リスクを減らします。
中小企業庁の人手不足対応事例集でも、属人的な業務体制からの脱却をめざし、業務の標準化と新システム導入で業務を効率化した事例が多数掲載されています。
業務の平準化でチーム全体の負荷を分散する
繁閑差が大きい業務は、事前準備を前倒ししたり、複数人で分担したりすることで平準化できます。
特に経理部などは、繁閑差が大きいため、業務の平準化は有効です。
働き方改革事例では、現場任せの運行管理から、デジタルツールで全員の運行状況を把握し、長時間運転へのアラートを出すことで、組織全体での平準化・安全確保を図っている企業が紹介されています。
標準化と平準化は、残業削減だけでなく、「人によるばらつき」や属人化リスクを減らすうえでも有効です。
ステップ3 削る・任せる・自動化で業務を効率化
業務の棚卸しと標準化の後は、止める・任せる・自動化で業務を効率化しましょう。
①不要な業務を止める
最も効果が高いのは、不要な業務を止めることです。
報告会議の頻度を減らす、承認フローを簡略化する、形式的な資料作成をやめるなど、目的に照らして不要な業務を削ります。
②外部に任せる
社内で対応する必要がない業務は、外部委託を検討します。
経理・総務の定型業務やコールセンター対応、Webサイト更新などは、外部に任せることで社内リソースをコア業務に集中できます。
③自動化する
「止める」「任せる」を検討したうえで、残った業務を自動化します。RPA等を使った自動化により、業務によっては作業時間を最大100%削減することも可能です。
岐阜県では、RPAの導入実証実験にて12業務を自動化し、1910時間の削減に成功。平均削減率73.2%、最大削減率100%と高い効果が表れたことを報告しています。
出典:岐阜県 RPA導入実証実験の結果報告
削る→任せる→自動化する。この順序を守ることで、効果的に業務効率化が進みますよ。
業務そのものを無くせないかという視点は目から鱗です!
自動化は効果的ですが、業務を無くせるならそれがベストですね
残業削減と生産性向上は私たちにお任せください
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DX・RPA・AIで残業削減と業務効率化を実現する方法
業務効率化ステップを踏まえたうえで、DX・RPA・AIをどこにどう使うと効果的かを解説します。ここでは、
- ペーパーレス・業務アプリ
- RPA
- 生成AI
の3つの領域に分けて、中小企業の活用事例とともに紹介します。
ペーパーレス化で紙・Excel業務から脱却
紙やExcel前提の業務をペーパーレス化し、業務アプリで管理することで、大幅な業務効率化が可能になります。
残業削減に効きやすい紙・Excel業務の例
勤怠管理・経費精算・稟議・承認・顧客管理・在庫管理など、紙やExcelで運用している業務は、ペーパーレス化と業務アプリ導入で効率化しやすい領域です。また複数人に共有したい資料や、検索頻度が高い資料、テレワーク対応したい業務もペーパーレス適性の高い業務です。
▶ ペーパーレスのメリットデメリットや向き不向き、導入方法はこちら
ペーパーレス化と業務アプリ導入で狙う効果
ペーパーレス化により、書類の印刷・配布・保管にかかる時間とコストを削減できます。また紙保管用のキャビネットの削減や、紛失リスクを減らせるといったメリットもあります。
業務アプリの導入には、以下のような効果があります。
- データの一元管理
- 承認フローの自動化
- 進捗のリアルタイム把握
厚労省テレワーク事例集では、東洋ハイテック株式会社がテレワークの本格導入とオンライン会議・クラウドツールの活用により、時間外労働を約49.3%削減し、有給休暇取得日数も11.9日→14.4日に増加させた事例が紹介されています。
RPAで効率化しやすい業務の条件
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、ソフトウェアロボットによる業務自動化のことです。ここでは、どんな業務に向いているかを簡潔に整理します。
RPAに向いている業務の条件
RPAに向いているのは、一般的に手順が決まっていて、例外パターンが比較的少ない作業です。
例えば、以下のような業務を自動化できます。
- システム間のデータ転記
- 請求書処理
- 売上・勤怠集計
- マスタ更新
▶ メールからスプレッドシートへの転記作業を自動化し、年間1200時間の削減に成功した事例もあります。
RPAが苦手な分野
判断基準が曖昧で毎回やり方が変わる業務は、RPAが苦手とする領域です。こうした業務は人の判断が必要であり、RPAで自動化するメリットが薄いのです。
しかし近年では、生成AIの発展により「考える自動化」も実現できるようになりました。RPA単体で自動化が難しい領域も、AIとの連携で自動化できます。
▶ RPAの詳しい概要やメリット・デメリットはこちら
AIによる「考える」自動化
生成AIは、文書作成・メール下書き・議事録要約・一次調査などに効果的です。
AIの得意分野
生成AIが得意とするのは、テキスト生成・編集系の業務です。
- 議事録の要約
- 企画書の草案作成
- 問い合わせの自動返信
- マクロやVBAといったローコード生成
文書草案・メール下書き・議事録要約・規程案ドラフトなど、「頭は使うが定型的で量が多い仕事」に対して、生成AIは有効な手段といえます。
ペーパーレス・業務アプリで蓄積したデータをAIで活用
ペーパーレスや業務アプリで蓄積したデータを、生成AIで要約・レポート化することで、経営判断に必要な情報を素早く取り出せます。データの整理と可視化が進むほど、AIによる分析・要約の精度も向上します。
しかし紙媒体の業務が多いと、RPAやAIで成果を挙げるハードルが上がります。
まずはペーパーレスで自動化の基盤を作り、RPAやAIによる自動化の恩恵を受けられる体制づくりも重要です。
合同会社URUでは、ペーパーレス化からRPA・AI導入、さらには内製化支援まで、一気通貫してサポートしています。自動化件数100件超、教育実績150人超の実績をもとに、貴社に最適なプランをご提案します。
まずは無料で業務棚卸を行い、導入効果を数値で算出しましょう。
中小企業のDX・RPA・AI活用事例3選
ここでは、中小企業にも応用しやすいDX・RPA・AI活用事例を3つ紹介します。
事例① ペーパーレス+業務アプリで残業を削減
建設業の小幡建設工業株式会社は、現場から打刻できる勤怠管理ITツールの導入と、有給休暇の時間単位取得など就業規則の改定により、残業時間を約3分の1に削減しました。
| 項目 | 成果 |
|---|---|
| 残業時間 | 3分の1に削減 |
| 勤怠管理業務の工数 | 2日→1日(50%削減) |
| 有給消化率 | 向上 |
紙のタイムカードや手作業集計からクラウド勤怠管理システムへ移行することで、勤怠データの見える化と事務負担の軽減を同時に実現した例です。
事例② RPAで総務・経理の定型業務を自動化したケース
北海道恵庭市は、定型で量の多い税務課業務をRPAで自動化し、職員の負担軽減・時間外労働削減と作業の正確化を目的に導入しました。紙ベースの申告書をAI-OCRでデータ化し、RPAと組み合わせることで、課税業務の大幅な効率化を実現しています。
| 項目 | 成果 |
|---|---|
| 導入内容 | RPA、AI-OCR |
| 業務削減率 | 最大65%の削減効果 |
| 自動化業務数 | 16業務 |
中小企業でも、請求書処理や売上集計など定型業務が多い総務・経理部門は、RPA導入の効果が出やすい領域と言えます。
事例③ AIで議事録作成や社内問い合わせ対応を効率化したケース
広島県では、生成AIを利用した職員のうち約40%が「時間短縮など効果があった」と回答しており、多くの職員が継続利用を希望したと報告されています。そして生成AI導入の有効性を確認できたことから、本格的な活用が始まっています。
中小企業でも、議事録作成や社内マニュアル整備、顧客向けメール文案など、文書作成に多くの時間を割いている場合は、生成AI導入で工数削減が期待できます。
まとめ|残業削減と生産性向上は業務×DX×人の3本柱で進める
日本の労働生産性はOECD下位に位置し、「長時間労働の割に成果が出ていない」という構造があります。過労死ライン(1か月100時間、2〜6か月平均80時間)付近の残業は健康リスクが高く、そもそもギリギリまで残業を容認する発想自体が危険です。
残業削減と生産性向上を両立させるには、以下の流れで進める必要があります。
- 業務の見える化
- 設計の見直し
- DX・RPA・AI活用
業務・DX・人の3本柱をセットで動かすことで、残業削減と生産性向上を同時にかなえられるのです。
まずは1歩を踏み出しましょう!
まずは、自社の残業実態と業務の棚卸しから着手してください。
部署別・曜日別・業務別に残業時間を集計し、「どこにボトルネックがあるのか」を把握することが第一歩です。
必要であれば、第三者の視点を入れて業務設計を一緒に考えることで、社内だけでは見えなかった改善ポイントが見つかることもあります。
合同会社URUでは、DX・RPA・AI活用を含めた残業削減と業務効率化について、無料相談も承っています。
御社の業務フローと残業データを一緒に棚卸しし、「削る・任せる・自動化する」を整理するお手伝いをいたします。お気軽にご相談ください。
