- 残業を減らしたいけれど、何から手をつければいいかわからない
- ノー残業デーを導入したのに、サービス残業が増えただけだった
そんなお悩みはありませんか?
残業削減は「時間を制限する」だけでは逆効果になる場合もあります。
この記事では、残業の根本原因の分析、今すぐ実践できる施策、DX・RPAを使った自動化、中小企業の成功事例まで、残業削減を成功させる全体像を解説します。
まず押さえたい「残業削減」の4つの基本ステップ
残業削減を成功させるには、闇雲に施策を打つのではなく、順序立てて進めることが重要です。次の4ステップで、効果的で継続しやすい削減を目指せます。
ステップ1 現状を見える化する
まず残業の実態を把握します。部署別・個人別の残業時間、どの業務にどれだけ時間がかかっているか、月末月初など特定時期に集中していないかを可視化します。
勤怠管理システムがなければ、簡易的なExcel集計でも構いません。
大切なのは「なんとなく残業が多い」という感覚を、具体的な数字に置き換えることです。
ステップ2 原因を分析する
残業時間のデータが集まったら、「なぜ残業が発生しているのか」を分析します。原因は次の4つの視点で整理できます。
- 業務量の視点: 仕事量が多すぎないか、人員配置は適切か
- スキルの視点: 特定の人にしかできない業務が集中していないか
- 文化の視点: 「残業して当たり前」の雰囲気や、定時で帰りづらい空気がないか
- 仕組みの視点: 非効率な業務プロセスや手作業が残っていないか
ここで原因を誤ると、後の施策が空回りします。現場へのヒアリングやアンケートで、実態を正確につかむことが大切です。
ステップ3 すぐ効く運用・制度で「ムダ残業」を減らす
原因が見えたら、まず運用ルールや制度の見直しに着手します。比較的低コストで、短期間でも効果が出やすい施策です。
- ノー残業デーの設定
- 残業事前申請制の導入
- 会議時間の短縮とアジェンダの明確化
- 業務棚卸しと「やめる業務」の選定
- 評価制度の見直し(長時間労働を評価しない仕組みづくり)
これらで、不要な残業や慣習的な残業を削りましょう。
ステップ4 固定業務をDX・RPAで自動化する
運用改善だけでは減らしきれない「毎月・毎日必ず発生する定型業務」には、デジタル技術が有効です。
バックオフィスの月次締めや、工場の実績入力・帳票処理など、ルールが明確で繰り返し発生する業務はRPA(ロボットによる業務自動化)と相性が良い領域です。
この4ステップを順番に進めると、表面的な時短ではなく、根本から残業を減らす体質改善ができます。
残業削減がうまくいかない5つの原因
残業削減に取り組んでいるのに成果が出ない場合、次のいずれかが原因のことが多いです。
原因① 業務量・人員バランスの問題
労働安全衛生総合研究所の調査では、残業が生じる理由として「業務量が多いため(38.4%)」「人員不足(29.8%)」と上位を占めています。さらに特定の社員に業務が集中すると、業務が属人化するリスクもあります。
業務量を減らすってどうすれば良いの?と思われるかもしれませんが、デジタル技術を使って業務を自動化したり、業務プロセスの見直しによって実現できます。以下の記事で特集しておりますので、ぜひご覧ください。
▶ 残業削減と生産性向上を同時にかなえる業務効率化×DX活用ガイド
原因② 古い業務プロセス(紙・Excel・二重入力)
ある宿泊施設では、予約情報を紙台帳・Excel・予約サイトでそれぞれ管理していたため、1日あたり約2時間を別システムへの情報転記に費やしていました。
このような非効率な手作業が積み重なると、本来の業務時間が圧迫され、残業でカバーせざるを得ません。
特に月末月初の締め業務や、システム間のデータ転記は、自動化による効果が大きい領域です。
原因③ 組織文化・マネジメント(帰りづらさ・残業歓迎ムード)
「上司が残っているから帰れない」「定時で帰ると評価が下がる気がする」といった雰囲気の職場では、必要のない残業が生まれやすくなります。
「周囲に遠慮して申告しない」「上司に申告するなと言われた」などの理由でサービス残業が発生するケースもあります。見えない残業が増えると、実態の把握自体が難しくなります。
原因④ 「残業代が収入源」になっている評価・賃金設計
残業代を前提に生活設計している従業員が多いと、残業削減への抵抗感が生まれます。基本給が低く残業代で補う賃金体系では、残業削減が収入減に直結し、モチベーション低下につながりかねません。
原因⑤ 「時間だけ抑える」対症療法の弊害
残業禁止を徹底しても業務量が変わらなければ、仕事を持ち帰ったり、隠れ残業(サービス残業)が増えるだけです。「残業時間は減ったが、実際の労働時間は変わっていない」という事態になります。
時間規制だけでなく、業務そのものを見直さなければ、本質的な解決にはなりません。
残業削減のメリットとリスク
残業削減には大きなメリットがある一方、進め方を誤るとサービス残業や士気低下などのリスクも伴うため、正しいアプローチで進めることが欠かせません。
メリット
残業削減によって得られるメリットを解説します。
離職率低下による人材コスト抑制
長時間労働を是正することで離職を防ぎ、採用・育成にかかるコストを抑えやすくなる。
「ブラック企業」イメージからの脱却
残業が多い状態を改めることで、ブラック企業と見なされるリスクを減らせる。
採用コストの削減
働きやすい環境を整えることで求人応募が増え、離職が減る結果、採用コストと採用活動の手間を同時に抑えられる。
リスク
残業削減のやり方を間違えたとき、発生し得るリスクについて解説します。
サービス残業・隠れ残業の増加
時間制限だけを厳格にすると、申告されないサービス残業や持ち帰り仕事が増えるおそれがある。
従業員のストレス・士気低下
業務量を減らさず残業だけ禁止すると、「仕事が終わらないのに帰らされる」状態になり、強いストレスと士気低下を招く。
業務品質の低下
時間だけを削ろうとすると、作業の詰めが甘くなり、ミスや品質低下が起こりやすくなる。
本質改善を先送りする形骸化リスク
残業時間の数字だけを追うと、業務プロセスや体制の見直しが置き去りになり、問題が隠れたまま残る。
残業削減の方法・取り組みアイデア
ここでは、すぐ実践できる残業削減施策を紹介します。自社の原因に合わせて、適切な施策を選んでください。
| 原因 | 効果的な施策 |
|---|---|
| 業務量過多・人手不足 | 業務の優先順位付け、アウトソーシング、採用強化 |
| 非効率なプロセス | 業務フロー見直し、承認手続き簡素化、DX・RPA導入 |
| 属人化 | マニュアル整備、ジョブローテーション、ナレッジ共有 |
| 企業文化 | ノー残業デー、トップのメッセージ発信、評価制度見直し |
| 賃金設計の問題 | 基本給見直し、成果評価制度の導入 |
今すぐできる!運用・ルールの見直し施策7選
残業時間のリアルタイム可視化
勤怠管理システムで、部署別・個人別の残業時間をダッシュボード表示します。月次ではなくリアルタイムで把握することで、上限に近づいた社員に早めにアラートを出せます。
残業申請制/残業チケット制/ノー残業デーの工夫
事前申請なしの残業を原則禁止し、上司の承認を必須とします。月に使える残業時間を事前配分する「残業チケット制」も有効です。
ノー残業デーは全社一律ではなく、部署の繁閑に合わせて柔軟に設定すると実効性が高まります。
▶ ノー残業デーは本当に意味がある?失敗しないための導入・運用ガイド
会議のルール化
会議は原則30分以内、アジェンダは事前共有、参加者は必要最低限に絞るなどのルールを徹底します。
「なんとなく参加」の会議を減らすだけで、実務時間は大きく増えます。
制度・評価を変える施策
評価項目に「業務効率」「残業削減」への貢献を入れる
長く働いた人ではなく、短時間で成果を出した人を評価する仕組みに切り替えます。残業削減に貢献した改善提案を表彰する制度も効果的です。
インセンティブ制度の見直し
残業代前提の給与体系を見直し、基本給やボーナスで適正な処遇を確保します。残業が減っても収入が大きく下がらない設計にすれば、従業員の協力を得やすくなります。
▶ 残業代に頼らない!残業削減で失敗しないための給与設計ガイド
システム・DXを使った施策
ペーパーレス化
紙の稟議書や申請書をデジタル化することで、承認待ち時間を短縮し、書類探しの手間も減らせます。
デジタル化により、RPAやAIによる自動化も導入しやすくなります。
▶ ペーパーレスのメリットデメリットや向き不向き、導入方法を徹底解説
RPA・AIによる業務の自動化
定型的なデータ入力や転記作業をロボットに任せることで、業務によっては最大95%以上の時間削減が可能です。
▶ 残業削減と生産性向上を同時にかなえる業務効率化×DX活用ガイド
▶ 【事例紹介】RPAの内製化で業務工数を95%削減
残業削減を成功させるためのコツ
原因に合わせた施策を打つ
業務量過多が原因なのに会議削減だけしても効果は薄いです。自社の原因に合った施策を選ぶことが鍵です。
徹底的に原因の特定にこだわりましょう!
目標・削減効果を数字で共有する
「残業を減らそう」という抽象的な呼びかけではなく、「月平均残業時間を20時間以内にする」「今年度中に残業代を15%削減する」など、具体的な目標を設定し、全社で共有します。
従業員が受け入れやすい仕組みにする
残業削減が「押し付け」にならないよう、従業員のメリット(ワークライフバランス向上、健康維持など)を丁寧に伝え、理解と協力を得ることが大切です。
スモールスタートで始める
大企業のような大規模なシステム投資や組織変革は、中小企業には負担が大きい場合があります。まずは小さく始め、効果を確認しながら徐々に広げるアプローチが現実的です。
中小企業向け「残業削減 自動化ロードマップ」
運用改善だけでは減らしきれない定型業務には、DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI、RPAの活用が効果的です。
自動化に向いている業務の見極め方
次の条件に当てはまる業務は、自動化の優先度が高いです。
- 頻度が高い: 毎日・毎週・毎月必ず発生する
- ルールが明確: 判断基準が曖昧でなく、手順が決まっている
- 繰り返し作業: コピー&ペーストでの転記作業などの繰り返し作業
これらの特徴に一致する業務が多い場合は、自動化の恩恵が大きい可能性が高いです。
自動化でどれくらい業務時間を削減できるか、まずは無料診断でご確認ください。
小さく始めるRPA・DX導入のステップ
RPA(業務自動化)を進める際は、スモールスタートでリスクを抑えるのがお勧めです。
以下のような手順で導入することで、最小限のリスクで導入判断が可能です。
本導入
PoCで効果が確認できたら、本格導入に進みます。対象業務を増やす際も、一度にすべてを自動化するのではなく、段階的に拡大します。
内製化
最終的には社内でロボットの作成・修正ができる体制を目指します。外部パートナーに依存し続けると、長期的にコストがかさむためです。
AIとの組み合わせで削れる残業
RPAとAIの組み合わせで、「考える自動化」も実現できます。
紙帳票→AI-OCR→RPA登録
紙の注文書や請求書をAI-OCR(文字認識)でデジタル化し、そのデータをRPAが自動でシステム登録する流れを作れば、大幅な時間短縮が可能です。
▶ 経理の残業をどう減らす?中小企業のための経理の残業削減ガイド
問い合わせ対応の一次返信案作成など
社内外からの問い合わせメールに対して、AIが自動で返信案を作り、担当者は最終確認だけ行う形にすれば、対応時間を削減できます。
自社に合うDXロードマップを一緒に作りたい方は、ぜひご相談ください。業務棚卸と現状分析は無料です。
弊社のDX支援について
合同会社URUでは、無料診断から導入、運用、内製化支援まで、一気通貫でサポートしています。多くのRPA導入支援企業は「導入して終わり」ですが、URUは長期的な外注コストを抑えるため、社内でRPAを運用できる体制づくりを重視しています。
無料相談はこちら残業削減の効果を数字で示す|KPI・成功事例の作り方
残業削減は「体感」ではなく、時間とコストの数字で示すと社内の納得感が一気に高まります。
ここでは、合同会社URUが支援したRPA・DX事例を含む3つの成功事例をご紹介します。
事例① 制度と業務見直しで長時間残業を一掃
背景
株式会社一ノ蔵(製造業)では、若手の採用・育成を進めるうえで、「長く働き続けられる労働環境づくり」が課題でした。
施策
- 社長や管理職が率先して「17時を過ぎたら帰るのが当たり前」というメッセージを発信し、定時退社を社内文化として浸透させた。
- 定期的な職場異動・職務変更によるジョブローテーションを導入し、1人ひとりのスキルアップと、周囲のサポートで業務効率を高めた。
結果
- 残業時間は月平均1.4時間まで低下し、長時間労働を実質的に解消。
- 年次有給休暇の取得率は60%に上昇し、休みやすい環境を実現。
- 若者の採用・育成に積極的で労働環境が良好な企業として「ユースエール認定企業」の宮城県第1号に認定。
事例② メール転記の自動化で年間1,277時間削減(航空業)
背景
弊社が支援した航空企業では、フライト情報が1日300件超(30通×10件/通)メールで届き、担当者がスプレッドシートへ手入力していました。メール形式は10種類以上で、内容確認と転記に1日3〜4時間かかり、残業の原因になっていました
施策
- RPA(UiPath)でメール本文からフライト情報を自動抽出
- 正規表現で10種類以上のメール形式に対応
- RPAがスプレッドシートへ自動転記し、担当者は結果チェックのみ
結果
- 作業時間:1日3〜4時間 → 30分(工数85%削減)
- 転記頻度:1日2回 → 1日4回(夜間分も自動処理)
- 転記ミス:時折発生 → 0件
- 年間削減時間:1,277時間の手作業を削減
▼ 詳しくはこちらをご覧ください。
事例③ セキュリティ業務を自動化し、工数90%減・確認頻度5倍(商社)
背景
弊社が支援した自動車メーカー様では、基盤OS(RedHat)の脆弱性情報を週1回、数百件分サイトで確認し、レポートを作成していました。1回の作業に4時間かかり、単純ですが精神的負荷が高い業務です。
また週1回の確認では、新たな脆弱性情報を見落とすリスクも大きい状況でした。
施策
- RPA(UiPath)で脆弱性情報サイトの自動チェックとExcelレポート作成をRPA化
- 担当者はレポート確認と必要な対応判断のみに集中
結果
- 作業時間:4時間/回 → 15分/回(工数90%削減)
- 実行頻度:週1回 → 週5回(500%向上)
- 担当者負荷:大量の単純作業から解放され、本来業務(分析・改善)に集中
- 年間削減時間:144時間の工数削減と、セキュリティリスクの低減を両立
▼ 詳しくはこちらをご覧ください。
よくある質問
まとめ|残業削減は「仕組みを変えるプロジェクト」
残業削減を成功させるには、次の流れが重要です。
- 現状の見える化: 残業時間・業務内容を正確に把握
- 原因の分析: 業務量・スキル・文化・仕組みの4視点で原因を特定
- 運用・制度の改善: ノー残業デー、申請制、評価見直しで「ムダ残業」を削減
- DX・RPAの活用: 固定業務を自動化し、根本から残業を減らす
単に時間を制限するのではなく、業務そのものを見直し、仕組みを変えることが本質です。
明日からできる3つの小さな一歩
- 残業理由のアンケート: まず現場の声を聞き、実態を把握する
- ルーティン業務の棚卸し: 定型業務をリストアップし、自動化候補を洗い出す
- 無料診断や相談の活用: 外部専門家に相談し、客観的なアドバイスを得る
この記事が、貴社の残業削減と働き方改革の一助になれば幸いです。残業削減は「社員を追い込む施策」ではなく、従業員満足度と生産性を同時に高める取り組みです。
「自社の残業削減に何から着手すべきかわからない」という方は、業務棚卸しテンプレートと簡易ロードマップの無料提供を活用してみてください。合同会社URUでは、御社の現状に合わせた残業削減プランを一緒に考えます。
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